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50年解けなかった「タンパク質の形」の謎:2024年ノーベル化学賞のAIが2億種類の構造を予測した意味

2024年のノーベル化学賞は、タンパク質の立体的な形を予測するAI「AlphaFold2」を開発した2人と、まったく新しいタンパク質を設計した研究者に贈られました。アミノ酸の並びから形を当てる問題は、1970年代から50年近く研究者を悩ませてきた難題でした。このAIの開発の裏側を追ったドキュメンタリー映画は、YouTubeで4億4,247万回以上再生されています(2026年10月9日確認)。AIがなぜ化学賞なのか、何が変わったのかを、ノーベル財団の発表と公開データベースから見ていきます。
この記事のポイント
- 2024年のノーベル化学賞は、半分がデイヴィッド・ベイカー氏(タンパク質の設計)、残り半分がデミス・ハサビス氏とジョン・ジャンパー氏(タンパク質の構造予測)に贈られた
- タンパク質はアミノ酸がひも状につながって折りたたまれ、その立体的な形が働きを決める
- 2020年に発表されたAlphaFold2は、研究者が見つけてきた約2億種類のタンパク質のほぼすべての構造を予測した
- 190か国の200万人以上が利用し、予測された構造は無料のデータベースで公開されている
タンパク質は「形」がすべて
ノーベル財団の発表によると、タンパク質は生命の化学反応を動かす道具であり、ホルモンや信号を伝える物質、抗体、さまざまな組織の材料としても働いています。タンパク質は主に20種類のアミノ酸からできていて、そのアミノ酸が長いひものようにつながり、折りたたまれて立体的な形になります。この形が、タンパク質の働きを決めています。
鍵と鍵穴のように、形が合うからこそ特定の物質とくっついたり、反応を助けたりできるのです。だからこそ、アミノ酸の並び方から形がわかれば、そのタンパク質が何をしているのかを理解する大きな手がかりになります。
1970年代からの難題をAIが解いた
アミノ酸の並びから立体構造を予測する研究は、1970年代から続けられてきましたが、非常に難しいことで知られていました。ノーベル財団は、2020年に起きたこの分野の「驚くべき突破口」として、ハサビス氏とジャンパー氏が発表したAIモデル「AlphaFold2」を挙げています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受賞 | 2024年ノーベル化学賞 |
| ベイカー氏の業績 | コンピューターを使ったタンパク質の設計。2003年に、自然界のどのタンパク質とも違う新しいタンパク質を設計 |
| ハサビス氏・ジャンパー氏の業績 | タンパク質の構造予測。2020年にAlphaFold2を発表 |
| 予測された構造 | 研究者が見つけた約2億種類のタンパク質のほぼすべて |
| 利用者 | 190か国の200万人以上 |
ベイカー氏の研究グループは、その後も医薬品やワクチン、ナノ材料、小さなセンサーとして使えるタンパク質を次々と生み出してきました。「形を予測する」技術と「新しい形を設計する」技術の両方が、同時に評価されたのです。
何に役立っているのか
ノーベル財団は、AlphaFold2の多くの応用の例として、抗生物質が効かなくなる「薬剤耐性」の仕組みの理解や、プラスチックを分解できる酵素の姿を描き出す研究を挙げています。
予測された構造は、欧州分子生物学研究所(EMBL-EBI)などが運営する「AlphaFold Protein Structure Database」で、誰でも無料で見ることができます。データベースの案内によると、公開されている予測構造は2億件を超え、タンパク質の配列情報の標準的なデータベースであるUniProtの大部分をカバーしています。
これまでタンパク質の形を調べるには、実験で結晶をつくってX線を当てるなど、長い時間と費用が必要でした。予測があることで、研究者は実験の前に見当をつけ、どのタンパク質から調べるかを選びやすくなりました。
AIの成果を読むときのヒント
- 予測された構造は「予測」であり、実験で確かめた構造と同じではない。データベースでは予測の確かさも示されている
- ノーベル賞は、AIそのものではなく、それを使って長年の科学の問題を解いた研究者に贈られた
- 新しい薬がすぐにできるわけではない。構造がわかることは出発点で、効き目や安全性の確認には長い時間がかかる
まとめ
2024年のノーベル化学賞は、タンパク質の形を予測するAIと、新しいタンパク質を設計する技術に贈られました。AlphaFold2は、50年近く難しいとされてきた構造予測の問題で、約2億種類のタンパク質のほぼすべての形を予測し、その結果は無料で公開されています。AIの話題が続く中、この受賞は、AIが基礎科学の長年の問いに答えを出した例として記憶されるでしょう。