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人の体の細胞は約30兆個、腸内の細菌は約38兆個:「細菌は人の細胞の10倍」が誤りだった理由と、8割を占める赤血球

人の体をつくる細胞の数は、体重70キロの成人で約30兆個と推定されています。一方、体の中にすむ細菌は約38兆個で、人の細胞とほぼ同じ数です。長く言われてきた「細菌は人の細胞の10倍いる」という説は、2016年の研究で見直されました。口から体の中へ旅をするように人体の仕組みを紹介するフランス語の動画は733万回以上再生されています(YouTube、2026年10月9日確認)。自分の体の中に何があるのかという素朴な疑問に、研究論文の数字で答えます。
この記事のポイント
- 2016年の研究では、体重70キロの「標準的な成人男性」の細胞は約30兆個(3.0×10の13乗)と推定された
- 体の中の細菌は約38兆個(3.8×10の13乗)。人の細胞との比はおよそ1.3対1で、「10対1」ではなかった
- 人の細胞の数の84%は赤血球。小さな細胞が数の大半を占めている
- 細菌の総重量は約0.2キロ。数は多くても、重さでは体のごく一部
体の細胞は何個ある?
細胞の数の見積もりは、研究によって大きく異なってきました。2013年の研究(ビアンコーニ氏ら)は、臓器や細胞の種類ごとに数を積み上げ、合計を3.72×10の13乗、つまり約37兆個と推定しました。「人の細胞は37兆個」という数字は、この研究に由来します。
その後、イスラエルのワイツマン科学研究所のセンダー氏らは2016年、それまでの推定の根拠を一つずつ見直し、最新のデータを統合して改めて計算しました。対象は、20〜30歳、体重70キロ、身長170センチと定義された「標準的な成人男性(リファレンス・マン)」です。その結果、人の細胞は約30兆個と推定されました。
| 研究 | 人の細胞の数 | 体の中の細菌の数 |
|---|---|---|
| ビアンコーニ氏ら(2013年) | 約37兆個(3.72×10の13乗) | ― |
| センダー氏ら(2016年) | 約30兆個(3.0×10の13乗) | 約38兆個(3.8×10の13乗) |
数の84%は赤血球
センダー氏らの研究によると、人の細胞の数の84%を占めるのは赤血球です。赤血球は体積が約100立方マイクロメートルと、体の中でも特に小さな細胞の一つです。数で見ると血液をつくる系統の細胞が大部分を占め、筋肉や脂肪の細胞のような大きな細胞は、重さでは大きな割合を占めても、数ではごく一部にすぎません。
「細胞の数」と「重さ」は、まったく違う姿を見せます。数を数えれば体は赤血球だらけですが、体重の内訳を見れば筋肉や脂肪が大きな部分を占めているのです。
「細菌は10倍」はなぜ広まったのか
体の中の細菌は人の細胞の10倍いる、という話は、教科書や記事で長く繰り返されてきました。センダー氏らによると、その元になったのは1970年代の、たった1文の大まかな計算でした。消化管の体積を1リットルと仮定し、1グラムあたりの細菌の数(約1,000億個)を掛けて、腸内の細菌を約100兆個と見積もったものです。
センダー氏らは、細菌の大部分がすむ大腸の容積を改めて見積もり、細菌の数を約38兆個と計算しました。人の細胞約30兆個との比は約1.3対1で、細菌と人の細胞は「同じくらいの数」だというのが新しい結論です。細菌全体の重さは約0.2キロと見積もられています。
さらに研究は、排便のたびに大腸の内容物が4分の1から3分の1ほど減ることにも触れています。体の中の細菌の数は一定ではなく、一日の中でも変わっているのです。
数字を知ると見えてくること
- 腸内の細菌は、人の細胞と同じくらいの数がいる。腸内環境が健康の話題で注目されるのも、その存在の大きさを考えると自然なこと
- 赤血球が細胞の数の大半を占めることは、血液が体の中で大量につくられ続けていることを示している
- 研究の数字は、前提(体重、年齢、性別)と方法によって変わる。「◯兆個」という数字を見たら、どの研究のどの条件の値かを確かめる
腸内細菌を整える食品やサプリメントの効果は、商品ごとに根拠が異なります。体調に不安がある場合は、自己判断せず医師に相談してください。
まとめ
人の体の細胞は約30兆個(別の推定では約37兆個)で、その84%は小さな赤血球です。体にすむ細菌は約38兆個で、人の細胞とほぼ同じ数でした。「細菌は10倍」という有名な話は、1970年代の大まかな計算が元になっていたのです。体の中を旅する映像に興味を持ったら、その中に約30兆個の細胞と同じくらいの数の細菌が一緒に暮らしていることも思い浮かべてみてください。