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指の関節を鳴らす「ポキッ」の正体は?MRI実験でわかった音の仕組みと関節への影響

指を組んで押すと鳴る「ポキッ」という音。子どものころに「鳴らしすぎると関節が太くなる」と注意された人も多いのではないでしょうか。この音の正体は長いあいだ議論が続いてきましたが、2015年には音が出る瞬間の関節をMRIで撮影した研究が発表されています。この記事では、音の仕組みと「関節炎になるのか」という疑問について、実際の論文の内容に沿って整理します。
この記事のポイント
- 「ポキッ」は、関節の中に気体の空洞が急にできる瞬間に関係している、というMRIでの観察結果がある(2015年、カナダの研究チーム)
- 指を鳴らす習慣と手の変形性関節症のあいだに関連は見られなかった、という調査がある
- 一方で、習慣的に鳴らす人に手の腫れや握力の低下が多かったという報告もあり、「影響はまったくない」とまでは言い切れない
- 痛みや腫れをともなう場合は、鳴らす癖とは別の原因を考えて医療機関に相談を
関節の中では何が起きているのか
指の付け根の関節(中手指節関節)は、骨と骨のあいだを「関節包」という袋が包み、その中を滑液という液体が満たしています。指を引っ張ったり反らしたりすると、関節のすき間が広がり、中の圧力が下がります。
この音は昔から「関節の中にある泡がはじける音」と説明されることが多くありました。ところが、2015年に学術誌PLOS ONEに掲載されたカナダ・アルバータ大学などの研究では、指を器具でゆっくり引っ張りながら、MRIで1秒あたり3.2コマの撮影を行いました。10か所の関節を調べたところ、音が出た瞬間に関節のすき間に新しい空洞が急にでき、音のあとも空洞は見えたままだったと報告されています。
研究チームは、この結果を「もともとある泡がつぶれる音」ではなく「空洞ができること」に関係した現象だと結論づけました。くっついていた面が離れまいと抵抗し、限界を超えた瞬間に一気に離れて空洞ができる「トライボニュークリエーション」と呼ばれる現象として説明されています。
「鳴らすと関節炎になる」は本当か
この疑問を調べた研究はいくつかあります。代表的なものを並べると、次のようになります。
| 研究 | 調べた人 | わかったこと |
|---|---|---|
| 2011年 米国の調査(deWeberら) | 手のレントゲンを撮った50〜89歳の215人 | 鳴らす習慣がある人とない人で、手の変形性関節症の割合に有意な差はなかった(18.1%と21.5%)。鳴らしてきた年数や回数とも関連は見られなかった |
| 1990年 米国の調査(Castellanosら) | 45歳以上の300人 | 関節炎の多さには差がなかった。ただし習慣的に鳴らす人は、手の腫れや握力の低下が多かった |
| 1998年 医師本人の記録(Ungerの報告) | 本人1人 | 60年以上、左手だけを毎日鳴らし、右手は鳴らさなかった。両手とも関節炎は見られなかった |
最後の報告は、たった1人の記録です。科学的な証拠としては弱いものの、そのユニークさから2009年のイグ・ノーベル賞(医学賞)を受けています。
研究結果を読むときの注意点
数字だけを見ると「心配ない」と言いたくなりますが、どの研究にも限界があります。
- 2011年の調査は、過去の習慣を本人の記憶で答えてもらう方法です。何十年分の回数を正確に覚えている人は多くありません
- 1990年の調査は「関連がある」ことを示しただけで、鳴らすことが腫れや握力低下の原因かどうかまでは分かりません。同じ調査では、鳴らす習慣が手を使う仕事や爪をかむ癖、喫煙、飲酒とも関連していました
- MRIの研究は、音が出る仕組みを観察したもので、長年続けたときの健康への影響を調べたものではありません
つまり現時点でいえるのは、「関節炎になる」という説は調査では確かめられていない一方で、手の機能への影響を示した報告もある、ということです。
気をつけたいサイン
鳴らしたときに痛みがある、関節が腫れている、熱をもっている、朝に指がこわばって動かしにくい、といった場合は、鳴らす癖とは別の病気が隠れていることもあります。自己判断で放っておかず、整形外科などで相談してください。
また、人によっては無意識に鳴らすことが癖になっています。手持ちぶさたなときに鳴らしてしまう場合は、まず自分がどんな場面で鳴らしているのかを把握するだけでも、回数を減らすきっかけになります。
まとめ
指の「ポキッ」は、関節のすき間に空洞ができる瞬間に関係していることが、MRIの映像からわかってきました。「鳴らすと関節炎になる」という説を裏づける調査結果は見当たりませんが、手の腫れや握力低下との関連を示した報告もあります。痛みがなければ過度に心配する必要はなさそうですが、違和感があるときは早めに専門家に相談しましょう。