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「永久機関」は特許が取れない:特許庁の審査基準が名指しする理由と、900年続く夢の装置の歴史

外からエネルギーを与えなくても動き続け、電気まで生み出すという「永久機関」は、日本では特許を取ることができません。特許庁の審査基準は、エネルギー保存の法則などの自然法則に反するものの例として、わざわざ「いわゆる永久機関」を挙げています。SNSで話題になった永久機関を実際に作って確かめるスペイン語の動画は1,570万回以上再生されています(YouTube、2026年10月9日確認)。「本当に動くの?」という好奇心は世界共通です。なぜ不可能なのか、なぜ人は900年近くも挑み続けてきたのかを、審査基準と百科事典の解説から見ていきます。
この記事のポイント
- 特許法の「発明」は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されている
- 特許庁の審査基準は、自然法則に反する手段(例:いわゆる「永久機関」)を含むものは「発明」に当たらないとしている
- 永久機関には、エネルギー保存の法則に反する「第1種」と、熱力学の第二法則に反する「第2種」がある
- 1150年ごろのインドの学者の考案から、ヨーロッパの車輪の装置まで、永久機関は何度も考え出されてきた
特許庁が「永久機関」を名指しする理由
特許法では、特許の対象になる「発明」を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しています(第2条第1項)。特許庁の「特許・実用新案審査基準」は、この定義に当てはまらないものの類型として、次の6つを挙げています。
- 自然法則そのもの
- 単なる発見で、創作ではないもの
- 自然法則に反するもの
- 自然法則を利用していないもの(経済の法則、ゲームのルール、数学の公式など)
- 技術的思想ではないもの
- 課題を解決するための手段は示されているが、その手段では解決が明らかに不可能なもの
このうち「自然法則に反するもの」について、審査基準は、請求項に書かれた発明の少なくとも一部に「エネルギー保存の法則などの自然法則に反する手段(例:いわゆる『永久機関』)」がある場合は、その発明は「発明」に該当しないと明記しています。永久機関は、特許制度の中で「自然法則に反するもの」の代表例として扱われているのです。
第1種と第2種、2つの永久機関
デジタル大辞泉や日本大百科全書(コトバンク収録)によると、永久機関には2つの種類があります。
| 種類 | どんな装置か | 何に反するか |
|---|---|---|
| 第1種永久機関 | エネルギーの補給を受けずに、外に仕事をし続ける装置 | エネルギー保存の法則(熱力学の第一法則) |
| 第2種永久機関 | ただ一つの熱源から熱を受け取り、それを全部仕事に変え続ける装置 | 熱力学の第二法則 |
第1種は、何もないところからエネルギーを生み出そうとするものです。第2種は、エネルギーの量はごまかさないものの、周りの熱をそのまま全部仕事に変えようとするものです。百科事典の解説によると、どちらも経験上不可能であることが確かめられ、そこから第1種はエネルギー保存の法則を、第2種は熱力学の第二法則を導くことになりました。永久機関への挑戦の失敗が、物理学の大切な法則を生んだともいえます。
900年近く続いてきた「夢の装置」
世界大百科事典の解説によると、永久機関の考案は古くから記録に残っています。
- 1150年ごろ、インドの天文学者で数学者のバースカラ2世が、書物の中で永久機関の考案を記述した
- 1200年ごろ、イスラム圏の学者イブン・リドワーンの書物には、重力を利用した6種類の永久運動の機械が記された
- 13世紀のヨーロッパでは永久機関の考案が流行し、ビラール・ド・オヌクールの画帳には、奇数個の槌をつけた車輪の図が描かれた
- 17世紀には、ウースター侯が球を転がす方式の車輪を考え、18世紀にはベスラー(オルフュレウス)が直径約3.7メートルの木製の車輪を実際につくってみせた
おもりや球の位置をずらして「片側が常に重くなる」ように見せる車輪は、今も永久機関の典型的なデザインです。しかし、重い側は回転の中心に近く、軽い側は遠くなるなど、全体で見ると力はつり合い、摩擦や空気の抵抗でやがて止まってしまいます。
「永久機関」の広告や投資話に注意
永久機関のように見える装置の多くは、実際には電池や外からの電源、手で回した勢いなど、見えにくいところからエネルギーを受け取っています。
- 「燃料不要で発電し続ける」「電気代がゼロになる」とうたう商品や投資の勧誘は、まず疑ってかかる
- 「特許出願中」「特許取得」という言葉だけでは、効果が認められたことにはならない。特許は効果を保証する制度ではない
- 少しでもおかしいと感じたら、消費者ホットライン188など公的な相談窓口に相談する
まとめ
永久機関は、エネルギー保存の法則や熱力学の第二法則に反するため実現できず、特許庁の審査基準でも「発明」に当たらない例として名指しされています。それでも人々は900年近く、車輪や水の装置で夢を追い続け、その失敗から物理の大切な法則が確立されました。話題の「永久機関」動画を見たら、エネルギーがどこから来ているのかを探してみると、仕組みが見えてきます。