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高い所では時間が速く進む:GPS衛星の時計は1日38マイクロ秒ずれる、スカイツリーで確かめられた相対性理論

雑学・ガイド雑学・豆知識公開日 2026/10/09 21:50読了目安 約4分閲覧: 0
高い塔の展望台の窓辺に置いた懐中時計と、眼下に広がる夜景(イメージ)
イメージ画像(AI生成)

重力が弱い高い場所ほど、時間はわずかに速く進みます。SF映画の中の話のようですが、スマートフォンの位置情報を支えるGPS衛星では、この効果を計算に入れなければ、位置が1日に約10キロもずれていくとされています。日本でも2020年、東京スカイツリーの地上と展望台に置いた超高精度の時計で、この「時間の遅れ」が実際に測られました。映画『インターステラー』の細部と結末を解説したポルトガル語の動画は1,071万回以上再生されています(YouTube、2026年10月9日確認)。映画で描かれた時間のずれが、私たちの身近でどう起きているのかを見ていきます。

この記事のポイント

  • 相対性理論によると、速く動く時計は遅れ、重力の弱い高い所にある時計は速く進む
  • GPS衛星の時計は、速さの効果で1日約7マイクロ秒遅れ、高さ(重力)の効果で約45マイクロ秒進む。差し引き1日約38マイクロ秒進む
  • この補正をしなければ、位置の誤差は1日に約10キロずつ積み重なるとされる
  • 理化学研究所などは、スカイツリーの地上と高さ450メートルの展望台で時計の進み方の違いを測り、一般相対性理論を検証した

2つの相対性理論と「時間のずれ」

アインシュタインの相対性理論には、時間についての2つの予言があります。

  • 特殊相対性理論:速く動いている時計は、止まっている人から見るとゆっくり進む
  • 一般相対性理論:重力の強い場所の時計はゆっくり進み、重力の弱い場所の時計は速く進む

地球の重力は、地面から離れるほど弱くなります。つまり高い場所にある時計ほど速く進みます。ふだんの生活では感じられないほど小さな差ですが、精密な時計を使えば確かめることができます。

GPS衛星では毎日38マイクロ秒

米オハイオ州立大学の天文学者リチャード・ポッゲ氏の解説によると、GPS衛星は地上から約2万キロの高さを、時速約1万4,000キロで回っています。この衛星に積まれた原子時計には、2つの効果が同時に働きます。

効果原因地上の時計と比べて
特殊相対性理論衛星が高速で動いている1日約7マイクロ秒 遅れる
一般相対性理論衛星の位置は地上より重力が弱い1日約45マイクロ秒 進む
合計―1日約38マイクロ秒 進む

38マイクロ秒は3万8,000ナノ秒です。GPSは電波が届くまでの時間から距離を計算するため、ナノ秒単位の正確さが必要です。ポッゲ氏は、相対性理論の効果を正しく扱わなければ、位置の誤差は1日に約10キロずつ増えていき、システムはまったく使い物にならなくなると説明しています。カーナビやスマートフォンの地図が正しく現在地を示すのは、相対性理論が毎日の計算に組み込まれているからなのです。

スカイツリーで測った「高さの時間差」

これまで一般相対性理論による時間の遅れは、原子時計を人工衛星やロケットに積み、宇宙と地上の間で約1万キロの高低差をつけて確かめられてきました。

理化学研究所の発表(2020年4月)によると、同研究所と東京大学などの共同研究グループは、島津製作所と共同で、18桁の精度を持つ持ち運びのできる「光格子時計」を開発しました。この時計2台を、東京スカイツリーの地上階と地上450メートルの展望台に置き、進み方の違いを測定しました。その結果を国土地理院が測った標高差と比べることで、衛星を使った実験に迫る精度で一般相対性理論を検証することに成功しました。必要な高低差は、宇宙での実験の1万分の1以下で済んだことになります。

時計で高さを測る時代へ

理化学研究所は、18桁の精度の時計では、わずか数センチの高さの違いでも時間の遅れが観測できるとしています。これを利用すれば、時計の進み方の違いから高さを測る「相対論的センシング技術」が可能になります。

研究グループは、プレートの動きや火山活動による、地面の数センチ単位の上下の変化を見張ることや、衛星測位(GNSS)や重力計と組み合わせた精密な標高・重力の計測などへの応用を期待しています。相対性理論は、宇宙の不思議を説明するだけでなく、防災や測量の道具にもなろうとしています。

「時間のずれ」を正しく理解するために

  • 時間の遅れは「時計が壊れる」ことではなく、時間の進み方そのものが場所や速さで違うということ
  • 日常で人が感じられる大きさではない。高い階に住んでも、体感できるほど年をとる速さは変わらない
  • 映画では誇張された演出もある。実際の大きさは、GPSやスカイツリーの実験のような測定の数字で確かめる

まとめ

相対性理論によると、高い場所では時間が速く進み、速く動くものの時間はゆっくり進みます。GPS衛星ではその差が1日約38マイクロ秒になり、補正しなければ位置が毎日約10キロずれていきます。東京スカイツリーでは、450メートルの高低差で時計の進み方の違いが実際に測られました。映画で描かれた時間の不思議は、毎日使っている地図アプリの中にも生きています。

参考資料

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