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金1グラムを1平方メートルに:金沢の金箔が「1万分の1ミリ」まで薄くなる仕組みと、7万回たたく伝統製法

金沢の金箔は、わずか1グラムの金を縦横1メートルの大きさまでたたき延ばしてつくられ、その厚さは1万分の1ミリしかありません。日本の金箔生産の98%以上を金沢が占め、文化財の修理にもこの金箔が欠かせません。中国の職人系クリエイターが500グラムの金を何万回もたたいて古代の黄金の仮面を再現した動画は1,909万回以上再生されています(bilibili、2026年10月9日確認)。金をたたいて延ばす技への関心をきっかけに、日本で400年以上受け継がれてきた金箔づくりを、政府広報と文化庁の資料から見ていきます。
この記事のポイント
- 金沢産の金箔は、日本の金箔生産の98%以上を占める
- 1グラムの金を1平方メートルにまでたたき延ばし、厚さは1万分の1ミリ。1グラムから約50枚の金箔ができる
- 伝統の「縁付(えんつけ)」製法では、専用の和紙に金を挟み、7万回以上たたいて仕上げる
- 縁付金箔製造は国の選定保存技術。2020年には、ユネスコ無形文化遺産「伝統建築工匠の技」の一つにもなった
1グラムが1平方メートルに
政府広報誌「Highlighting Japan」(2022年10月号)によると、金沢の金箔は1グラムの金を縦100センチ、横100センチの大きさにたたき延ばしてつくられ、厚さはわずか1万分の1ミリです。1グラムの金から約50枚の金箔をつくることができます。
金箔といっても純金だけではなく、金に微量の銀や銅を加えた合金を延ばしたものです。金は直接たたいても均一には延びないため、必ず何かの間に挟んで薄くしていきます。この「挟む素材」こそが、金箔の品質を左右する鍵になります。
7万回たたく「縁付」製法
400年以上続く伝統的な製法は「縁付」と呼ばれます。政府広報の記事が紹介している流れは次のとおりです。
- 圧延機で帯状に延ばした金を5センチ角に切る
- 約21センチ角の専用の和紙の間に、1枚ずつ交互に重ねる
- たたく機械に当て、厚さ1000分の1ミリになるまで紙全体に広げる
- さらに延ばすため専用の紙に移し替え、合計7万回以上たたいて1万分の1ミリに仕上げる
たたくと熱が出るため小分けにして冷ましたり、手際よく1枚ずつ和紙に挟んだりと、高い熟練が必要です。
文化庁の解説によると、縁付金箔製造の技術は大きく3つの工程に分かれます。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 澄(ずみ)工程 | 純金に微量の銀と銅を加えた合金を、厚さ1000分の1ミリの「澄」まで打ち延ばす。澄屋と呼ばれる専門の技術者が担う |
| 箔工程 | 澄をさらに打ち延ばして金箔に仕上げる |
| 紙仕込み工程 | 打ち延ばしに使う特殊な手すき和紙を仕立てる。仕上がりを大きく左右する、技術の要とされる工程 |
完成した正方形の金箔を「箔合紙」に重ねると、紙のほうが一回り大きく、金箔を縁取るように見えることから「縁付」と呼ばれます。
なぜ金沢なのか
政府広報の記事では、金沢市内を流れる犀川の上流で砂金がとれたことから「金の沢」、すなわち金沢と名付けられたともいわれるほど、町と金の結びつきが深いことが紹介されています。江戸時代、加賀藩の歴代藩主は伝統工芸の育成に力を入れ、金箔づくりはその柱の一つになりました。
金沢の職人は、静電気が起きにくい湿度の高い気候といった条件も、金箔づくりを続けてこられた理由に挙げています。1960年代からは手間の少ない新しい製法も行われるようになりましたが、伝統の縁付製法の金箔は輝きが違うといいます。
文化財を支える素材として
金箔には、縁付箔のほかに、工業製のグラシン紙を使う「断切(たちきり)箔」もあります。文化庁は、縁付金箔はきわめて薄く、しなやかで大きく、色つやに優れ、無形文化財の工芸作品の制作や文化財の保存修理に欠かせない原材料だとしています。縁付金箔製造は、文化財を守るために必要な技術として2014年に国の「選定保存技術」に選ばれました。
さらに2020年、金沢の金箔づくりは、ユネスコの無形文化遺産「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」の一つとして登録されています。中尊寺金色堂(岩手県)や金閣寺(京都府)、日光の陽明門(栃木県)など、金箔で飾られた建物は全国にあります。
身近な金箔との付き合い方
- 食用の金箔はお菓子や料理の飾りに使われている。購入するときは食品用として販売されているものを選ぶ
- 金箔を貼った工芸品は、指で強くこすらず、柔らかい布でほこりを払う程度にとどめる
- 金沢を訪れたら、金箔貼りの体験ができる施設で、薄さとしなやかさを実際に確かめてみるのもおすすめ
まとめ
金沢の金箔は、1グラムの金を1平方メートルまで延ばし、厚さ1万分の1ミリに仕上げる精密な手仕事です。専用の和紙に挟んで7万回以上たたく縁付製法は、文化財の修理を支える技術として国の選定保存技術となり、ユネスコの無形文化遺産にも含まれています。金をたたいて延ばす映像に驚いたら、その極みのような技が日本で400年以上続いていることも思い出してみてください。