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足元のマヤ遺跡に誰も気づかなかった:レーザー測量で見つかった長さ1.4キロの「最古・最大」の巨大基壇と日本人研究者

雑学・ガイド雑学・豆知識公開日 2026/10/09 21:50読了目安 約4分閲覧: 0
霧のかかる熱帯雨林を上空から見下ろす。木々の下にかすかな高まりが見える(イメージ)
イメージ画像(AI生成)

メキシコ南部で、長さ1,413メートル、幅399メートルという巨大な人工の高台が、飛行機からのレーザー測量によって見つかりました。マヤ文明で最大かつ最古の記念碑的な建造物とされる「アグアダ・フェニックス遺跡」です。発見したのは、日本人の考古学者・猪俣健さんらの国際チームでした。マヤ文明の失われた都市を追ったナショナル ジオグラフィックの番組は3,234万回以上再生されています(YouTube、2026年10月9日確認)。密林に眠る遺跡はなぜ見つからなかったのか、新しい技術で何がわかったのかを、科学誌の発表と研究資料から見ていきます。

この記事のポイント

  • アグアダ・フェニックス遺跡は、南北1,413メートル、東西399メートル、周囲より10〜15メートル高い巨大な基壇を持つ
  • 航空機からレーザーを当てて地表の3D地図をつくる「ライダー(LIDAR)」で発見され、2020年にNature誌に発表された
  • 建設は紀元前1000年前後で、マヤ地域で最古の記念碑的建造物。権力者の像のような身分差を示す証拠は見つかっていない
  • その後の調査で、中心部から方角に合わせて埋められた顔料や供物が見つかり、2025年に追加の成果が発表された

「大きすぎて」見えなかった遺跡

マヤ文明といえば、密林からそびえるピラミッドを思い浮かべる人が多いでしょう。ところがアグアダ・フェニックスの基壇は、高さが周囲より10〜15メートルほどしかなく、非常に広い範囲に平らに広がっています。地上を歩いても、ただのなだらかな高台にしか見えません。

この遺跡を見つけたのは、航空機からレーザー光を地表に照射し、その反射から地形を立体的に測る「ライダー」という方法でした。Natureのハイライト記事によると、猪俣健さんたちの研究チームはメキシコのタバスコ州でライダーを使った航空探査を行い、これまで知られていなかったマヤ遺跡を発見しました。高台からは9本の土手道が周囲に伸びていました。

最古で最大、そして「平等」な建造物

項目内容
場所メキシコ・タバスコ州
規模南北1,413m × 東西399m、周囲より10〜15m高い
発見の方法航空レーザー測量(ライダー)、地上踏査、発掘、放射性炭素年代測定
年代2020年の論文では紀元前1000〜前800年の建設と推定
発表2020年 Nature、2025年 Science Advances

マヤ文明は、小さな村が少しずつ増えて発展していったと考えられてきました。しかし、紀元前950年ごろの儀式用の施設がグアテマラのセイバルで見つかるなど、この考え方は見直しを迫られていました。アグアダ・フェニックスは、それよりもさらに大きく、マヤ地域で見つかった中で最古の記念碑的建造物となりました。

注目されたのは、同じころのオルメック文化の遺跡などと違って、地位の高い人物の彫像のような、はっきりした社会的な格差を示す証拠がないことです。研究チームは、こうした儀式用の巨大施設は、マヤ文明の初期に人々の共同作業が重要だったことを示していると結論づけています。

その後わかった「方角」へのこだわり

国際調査団に参加する考古学者・青山和夫さん(茨城大学)の研究紹介によると、その後の調査で、前1100年ごろから前700年ごろにかけて造られた遺跡全体の姿が明らかになり、2025年にScience Advances誌で発表されました。

  • 巨大基壇の中央から十字の形をした遺構が見つかり、グアテマラ高地産のひすいでつくった石斧や装飾品などの供物が埋められていた
  • その最も下の層には、方角を表す色の顔料(青・緑・黄)や海の貝が、東西南北の位置に合わせて埋められていた
  • 実際の方角に沿って顔料を埋めた例としては、メソアメリカで最古(紀元前900年ごろ)で最初の発見とされる
  • 基壇の中心を通る東西7.5キロ、南北9キロの軸に沿って、道や水路が整えられていた

3,000年近く前の人々が、宇宙や方角についての考えを、巨大な土の建造物と埋めた品々で表現していたことがうかがえます。

新しい技術が変える考古学

ライダーは、木々のすき間を通ったレーザーの反射を使って、森をはぎ取ったような地表の形を描き出せるのが強みです。一方で、地図に写った高まりが本当に遺跡かどうか、いつの時代のものかは、現地での踏査や発掘、年代測定で確かめる必要があります。アグアダ・フェニックスも、空からの発見と地上での地道な調査の組み合わせで、その姿が明らかになりました。

古代遺跡のニュースを読むときのヒント

  • 「最古」「最大」は、比べる範囲(マヤ地域のみか、世界か)を確認する
  • 年代は研究が進むと修正されることがある。最初の発表と最新の発表の両方を見る
  • 原著論文の要約や、研究機関の公式発表を確認すると、誇張のない情報がわかる

まとめ

アグアダ・フェニックス遺跡は、あまりに広く平らだったために、地上では誰も遺跡だと気づかなかった巨大な基壇でした。空からのレーザー測量がその姿を描き出し、日本人研究者を含むチームが、マヤ文明の最古・最大の記念碑的建造物であることを示しました。失われた都市の物語に引き込まれたら、新しい技術が今も古代の常識を書きかえていることにも注目してみてください。

参考資料

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